服薬中のお薬を理解していますか?

前回に続き、お薬関係の話です。

 

当院では、内科系の疾患でお越しになる患者様には可能な限り、お薬手帳、またはそれに類するもので、服薬中のお薬を全て確認させていただいております。

 

と言いますのも、私の製薬会社の営業時代(MR)の経験と知識から、処方内容を見れば、医師がどのように疾患を捉えているか、どのような治療方針なのかをおおよそ理解することができるからなのです。

 

また、もう一つの目的は、現在の症状がお薬の副作用である可能性も考えて、本当に必要なお薬だけが出ているのか?意味不明の薬が含まれていないか?と言うことを確認するためです。

 

実際、痛みに対してリリカとサインバルタが処方される例はよく見かけますが、リリカはそもそも神経障害性疼痛・線維筋痛症のお薬で、特に線維筋痛症に対しては、「線維筋痛症の診断は、米国リウマチ学会の分類(診断)基準等の国際的な基準に基づき慎重に実施し、確定診断された場合にのみ投与すること。」と言う但書がついているほどなので、気軽に処方して良い薬ではないはずです。

「神経障害性疼痛」については、特に制限がないため、気軽に使われる機会が多いのだと思いますが、前述の部分を考慮すれば、気軽に使われる薬ではないはずです。

 

また、サインバルタですが、これは私が前職で担当していた薬なので、医師よりも詳しいのです。

この薬は、本来、「抗うつ薬」として開発されましたが、神経下降路におけるセロトニンとノルアドレナリンの不足が痛みの増幅をもたらす、と言う事実に基づき、糖尿病性神経障害、線維筋痛症、慢性腰痛症、変形性関節症に対しても使うことができるようになりました。

 

ただし、「疼痛に対して本剤を投与する場合は、自殺念慮、自殺企図、敵意、攻撃性等の精神症状の発現リスクを考慮し、本剤の投与の適否を慎重に判断すること。」と言う但書がある通り、これも気軽に使うべき薬ではありません。

 

他の事例としてよく見かけるのは、プロトンポンプインヒビター(PPI)と言う薬です。

これは胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、逆流性食道炎などに適応がありますが、「胃潰瘍通常、胃潰瘍、吻合部潰瘍、逆流性食道炎では8週間まで、十二指腸潰瘍では6週間までの投与とする。」と言う記載があるにもかかわらず、先日来た方は1年以上、継続投与されていました。

ちなみに私も声帯ポリープの際に「逆流性食道炎が原因の可能性がある」と言われ、医師にはH2ブロッカーではなく、PPIが必要な理由を確認し、薬剤師にも「長期処方の妥当性について」確認しましたが、保険上の説明に留まり、長期処方の危険性については全く説明がありませんでした。

 

私のように、多少なりとも処方薬について知識があれば、このように医師の処方内容について自分で納得して服用することは当たり前なんですが、一般の方が、ここまで医師と話をするのは難しいと思います。

 

とはいえ、皆さん、ご自分の飲まれているお薬に無頓着な方が多すぎるのです。

忘れてはいけません。

お薬は基本「毒」なのです。

服薬する薬は最低限が基本です。

そして、どの薬がどのような理由で処方されているか、理解しなければなりません。

医師を信用しないと言う話ではありません。

自分で、納得してお薬を服用して欲しいのです。

 

ちなみに、調剤薬局では、皆さんから「薬剤服用歴管理指導料」をもらっていますので、お薬について安全に服薬を行うための指導を行う義務があります。

したがって、皆さんは、もし、お薬についてわからないことが有って、医師には聞きにくい、と言う場合は、薬剤師に遠慮なく質問してください。

それは、彼らの仕事なのですから。

 

いぶき館では、内科系の疾患でお悩みの皆様に対しても、可能な限り、全力を尽くします。

何かお困りのことがあれば、お気軽にご相談ください。